東京高等裁判所 昭和28年(う)2096号 判決
被告人 藤田宇一郎
〔抄 録〕
ところで、記録を調べてみると、所論の追起訴は昭和二八年三月二日附で為され、該追起訴状の謄本は翌三日に被告人に送達され、また、該追起訴にかかる事件の同日の公判期日の召喚状も亦、適式に被告人に送達されていることを認めることができる。そうして、原審は昭和二七年八月三〇日起訴にかかる事件の同日の公判期日において、検察官の請求と、それに対する被告人並びに弁護人の同意とにもとずいて、右追起訴にかかる事件の審理を併合して行う旨を決定し、爾後適法に手続を続行して原判決をしたのである。さて、右のような経過であるから、所論の追起訴にかかる事件の公判期日と被告人に対する、これが召喚状の送達との間には、三日の猶予期間を置いてはいなかつたけれども、右のごとく、昭和二七年八月三〇日起訴にかかる事件の公判期日に、これと公判期日を同じうする所から被告人並びに弁護人の同意を得て併合審理することになつたのであるから、所論の追起訴にかかる事件の公判審理が三日の猶予期間を置かないでなされたとしても 刑訴規則第一七九条第三項の規定によつて、原審の手続に違法とすべき廉はないものといわなくてはならない。また、弁護人は追起訴にかかる事件について被告人から弁護の依頼を受けていないとか、或はその事件の内容を知らないとかいつて、右併合審理手続を非難することも許されない。なぜならば、弁護人たる者は同一の被告人に対し同一の機会に追起訴された事件についても、反対の事情の認むべきもののない限り、当然弁護の委任を受けたものと解するのが相当であるし、更に、本件においては、弁護人自身が被告人と同様に併合審理に同意した上、併合されたのであつて、すでに併合された以上、刑訴規則第一八条の二に定めるところによつて追起訴にかかる事件についても弁護権を有することになるのであつて、弁護人は、追起訴にかかる事件についても現に弁護の労を執つているのである。所論中に、弁護人は併合審理につき不同意を申立てたというているけれども、これは原審公判調書の記載に反する所論であるから、とうてい採用することはできない。それで、原審の訴訟手続には所論のごとき違法の廉は毫もないものといわなくてはならない。従つて、論旨第一点は理由がない。